西野 弘司 蘚苔類(苔の話)
はじめに
植物は、光合成により成長し、他の植物よりも高く大きくなって、光を得ている。
コケは、逆に小さくなって、生存競争に打ち勝ってきた。倒木や切り株の上、石垣やブロック塀などちょっとしたスペースがあれば、そこで生きていけることが、コケの特徴。
コケは、栄養を吸収する根がないため、土は必ずしも必要ではなく、仮根でいろいろな上に活着出来て育成場所を広げている。
一体一体が小さいが故に環境の変化に弱いため、群生・密集・コロニーを作り生息している。仲間同士が集まり、水分を保ちやすく、雨風にさらされても流されたりや、飛ばされたりすることもない。子孫を残すために行う生殖では、個体同士が近いので受精しやすい。
コケの起源/生息地
カンブリア紀(5.4億年前-4,8億年前)は、海洋が地球上をほぼ全てを覆い尽くしていたので、陸上生物はいない時代で、生物(三葉虫、貝、藻類など)はすべて海の中に住んでいた。
☆オルドビス紀中期(4.7億年前)-シルル紀(4.4億年前)に、コケ/藻類が湿地や河口等の低地に出現した最初の陸上植物である。
☆コケ植物は、高山の頂上や極地から熱帯まで地球上のあらゆる環境で生活しているが、海水の中には見られない。
☆南北に長い日本列島には、 2
5 0 0種(世界18000種)のコケ植物が生育している。
生物の分類(コケ)
界:kingdom
1.動物(animal)
2.植物(plant)・コケ
3.菌(fungus)キノコやカビ・地衣類(lichen)
*地衣類は菌類の仲間で、必ず藻類(algae)と共に共生している。
階級なし
種子植物:裸子植物門
被子植物門(食虫植物)
門:division :コケ植物門:bryophyta
@ 鮮苔類:蕪類、苔類<ゼニゴケ>、
Aツノゴケ類(角状の胞子体を持つ)
シダ植物門<コゴミなど>
ヒカゲノカズラ植物門<ヒカゲノカズラ、トクサ、トウゲシバ>
綱:Class
目:Order
科:family
属:genus
種:species
*モウセンゴケ科は湿地の種子植物の食虫植物で、コケ植物門には含まれない。
*鮎が食べる川底の岩の「コケ」は藻類で、厳密に言えばコケではない。
忠子実体を作らない菌類は、カビ。
<コケ>
1,コケとは維管束(水や養分の通り道)を持たず、胞子で増える植物。
2.花を付けない隠花植物で、根がない。
3.胞子の袋を朔(さく)と言い、朔が鮮苔類を分ける最も重要な特徴。
*朔のほかに、外見的に見分け方
@植物体が偏平なものは苔類かツノゴケ類
A褐色の硬い柄のついた胞子体は、蘚類。
コケの用途と保護等
用途
ミズゴケが中心
1.北米のログハウスの隙間を埋める断熱材として。
2.第一次世界大戦で負傷者用の脱脂綿の代わりとして、また女性のナプキンとしても。
3.採りたての朝鮮人参の根を保護するために巻く。
4,蘭やブルーベリーの栽培には、欠かせない。
コケ一般
5.小さな昆虫(蚊など)のねぐら、或いは雨からの退避場所として。
6.ミソサザイ(wren)などの鳥の巣の材料として。
7.エゾモモンガは、秋に保温効果を高めるため、巣にコケを蓄える。
スナゴケ
8.日本CCが、自動販売機の表面温度上昇を抑えるため、自由が丘に自動販売機の上にスナゴケ(自重の20倍の水を保つ)と人工芝を組み合わせている。
9.日本庭園や寺院の庭園
10,炭化した泥炭を燃料(ウイスキー作り)として利用。
11ニホンカナへビの産卵場所はスギゴケの中に。産卵は、湿気を好むので、日陰の草むら、石の下、スギゴケの中に。
保護
1.雑草、落ち葉を除去して、生育環境を明るくしたりや、木漏れ日など陽の当たるようにする。
2.冬場の霜よけなど寒さから守るため、松の枯葉を敷きつめる。
3.水は、欠かさない。
4.ダンゴムシの駆除。これが、コケを世話する上で一番大変。ダンゴムシはコケの活動が活発になる五月頃から、柔らかい新芽を食べるようになり、新芽を食べられると保水が弱まり、暑くなってくるため枯れる事になる。
<代表的なコケ>
1.人里のコケ
*ギンゴケ:街中で、コンクリート塀の地際や石垣などに白・灰緑色の群落を作り、一番良く見られるコケ。葉先は、透明になる。
*ホソウリゴケ:ギンゴケに似ているが、葉の先は透明にはならない。
*フデゴケ:日当たりの良い岩上などの急斜地に生育する(宇治)。シッポゴケ科。
2,寺院の庭でよく見かけるコケ
*スギゴゲコケの並んでいる様子が杉に似ているため、付けられた名前。日本に30種
(世界400種)
代表的なウマスギゴケは日当たりの良い湿地に群生す、下部は褐色となる。
<京都・東福寺、大津・聖衆来迎寺>
オオスギゴケは逆に暗い林床に辞落。
☆シノブゴケ(触n moss):日陰地の湿った地上、岩上、腐木上に、葉は三角形で横に這い群落を作る。日本に15種(世界150種)
*ハイゴケ(這い苔):日当たりのいい、水田のあぜ道や保湿状態の背丈の短い草地の地面に生える。
3.フサフサしたシッポのようなコケ
*ヒノキゴケ:湿度の高い常緑樹林の林床によく見られる。「イタチノシッポ」の別名がある。
<福井の白山神社、羽黒山、天城山など→日本に4種(世界50種)
4.コケ女子に人気NO1のコケ
*タマゴケ:非常にフワフワした柔らかいコケで、風船のように球形の透明感のある朔が特徴。
<茨城>
5.かなりの好日性コケ
*スナゴゲ日当たりの良い砂質の上や岩の上、石垣などに群落を作る。コケの中でもかなりの好日性のコケで、自重の約20倍の水を保つ。
<白山一里野など>
6.実用的価値のあるコケ
*ミズゴケ:多量の水を含むことが出来るコケで、高層湿原の層を形成する材料となる。湿地で低温のため分解せずに炭化したのが泥炭(peatmoss)である。コケの中でも実用的な価値が高く、洋ランやブルーベリーの栽培には欠かせない。日本47種(世界150種)
<福島・安達太良山、磐梯山、など>
7.「鳳凰」の羽根に見立てられついたコケ
*ホウオウゴゲやや湿った場所に群落する。茎の途中の葉の間に、胞子体が出来るのはこの種の特徴である。
8.花の形をしたコケ
*カサゴケ:
「緑色の花」のような形をしたコケで、コケのイメージとはかけ離れた姿をしている。絶滅危惧種に登録されている。常に湿った環境を用意する必要がある。
9.コケの名前のつかないコケ
*マンネングサ:大型のコケで、樹木のような形となる。大きな群落を作る。
10.変な名前のコケ
*ナンジヤモンジヤゴケ