想いの花火への万雷の拍手と歓声

| コメント(0)

熱海での花火の夜、語り手で主人公の
スパークス徳永は、あほんだら神谷
(かみや)と出会ったことからこの物
語の話が始まります。
そこから、師弟関係を初めて結ぶこと
になったお話というか、徳永が綴った
神谷さんの伝記のような感じです。

物語に出てくるこのスパークス
(# spark: 火花、閃光)、
あほんだら、とはお笑い芸人のコンビ
名です。

火花(表紙).jpg
火花
又吉直樹
文藝春秋

語り手の徳永は、「どんな状況でも、
んな瞬間でも面白い芸人」になりたく
てとあって、神谷の純粋な面白さや才
能、変態的なまで追求する姿に、いつ
も才能を感じています。

でも、徳永は「自分はただ不器用なだ
けで、その不器用ささえも売り物にで
きない」、そんな自分を見つめていて、
常に考えています。

「自分の才能を越えるものは、そう簡
単に想像できるものでない」ともあり
ます。

小説の進むに連れた最近、お笑いコン
ビ、スパークスも、「独りよがりでは
なく、お客さんを楽しませることが出
来るようになったと思っていた。妥協
せずに、騙さずに、自分にも嘘を吐か
ずに、これで神谷さんに褒められたら
最高だと一人でにやついていた」と
認められたいと思っていました。

物語の最後は解散の話もあり、また花
火を見に行くのですが、変になってし
まった終わり方でした。神谷さんに徳
永が求めていた才能と決定的に違う何
かが分かったのかもしれません。彼は、
世間を振り向かせようとしていたので
すが、「本当の地獄というのは、孤独
の中ではなく、世間の中にこそある」
というこてでした。

私個人的には、世間の中にこそあると
いうのが新鮮な響きでした。今までは
毎日大変ではあるけれども、困難な世
間で、自分達や仲間が身を立てて行く
というような感じで受け取っていまし
た。

物語のコンビ解散の理由は、相方が彼
女との出来ちゃった婚ですが、笑いの
世界での活動では「世間というものを
剥がせなかった」からであるから、が
理由かもしれません。

又吉さんはテレビに出られ、よく本を
読まれる方の様に印象を受けます。
理想を持ち、世間の観念と戦っている
のかもしれませんと、その後を読み思
いました。私もどう見えるのか分かり
ませんが、最近ちょっと理想したりす
ることは実のところ、遠のいているの
でまた考えてみます。

コメントする

2017年8月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31