昔、天を支えていた木

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美しい島からの絵葉書が私宛に届く。
そうすると、どうしょうもなくそこへ行き
たくってしまい、飛行機に乗って実際に訪
れる。そんなお話で、主人公はそこの
ホテルの息子ティオです。

子供から大人に育っていくなかで、島も近
代化へ向かい、島をグルっと囲む道路を
コンクリで固めて舗装し、木製のカヌーだ
ったものがモーターボートに変わっていき
ます。

Minami_tio.jpg
南の島のティオ
池澤夏樹
文春文庫

舗装された道を夜中にこっそりと掘り起こ
そうとしたのは、その下にリュウグウ
オキナエビスが埋めてあり、後で島唯一の
少年野球チームのグローブの資金にします。
ボートが迷わない様に海上の浅いサンゴ礁
に添って標識を建てて行きますが、
サラティカ神によって沖の方へボートは
漂流していって翌朝まで行方不明になった
りします。

可愛いいいアコちゃんを治癒させるには天
のものにお願いする必要があると、昔から
生活してきた人知を超えたもの、土地の
精霊がこの島には息衝いています。

落ちると言われ飛行機が不時着して助かっ
た後、船のコンパスデッキから落ちて死ん
でしまうお話。何だかあの子は心配で、と
お母さんに言われるリランが本当にどこか
へ消えてしまったり、戦時中の恋人との再
会に40年にぶりに島に訪れる、そんな話
が短編集として連なり、本の全体を構成し
ています。

リゾート化している島に、外から来た人た
ちは想定よりも長く居つくことになって住
みたいと思うのですが、都会へ帰っていっ
てしまうと、何故か再び来なかったりしま
す。巨大流木を保持するために手紙をくれ
て、毎年決まってお金を振り込んだりです。

この小説のモデルとなったのは
ミクロネシアのポナペ島だそうです。

私としては海外へ旅行するのに合理的な理
由で滞在地を選ぶということでもないと思
うので、島へ人を引きつける魅力というの
は考えます。綺麗でも計画的で無味感想は
避けるのではないか、でも私が育った環境
はリゾートで泊まるお客さんと接するよう
な毎日とは違う都会で、残念ながら経験は
していないと思います。海や山に囲まれた
自然と神々や言い伝えはまた一つに語られ
るものなのかも分かっていないところです。

台風の被害で隣といっても遠くの島から避
難してきたエミリオはティオの親友となり、
何ヶ月も掛けて一本の木から彫って作った
カヌーで、600キロも離れた故郷へと一
人、大海原へ旅立ちます。大人になって遠
い先へ、自分だけで渡っていこうとする姿
をティオは見ていました。

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