がらくた
江國香織
新潮文庫
開放的でしばられていてしばられていない
美術翻訳をしている女性、柊子と、
日本の学校・学生に半分だけで抜け出した
りして、日本人ですが外見的にも生活した
時間も半分国際的な美海ちゃんと、語り
手がチェンジして物語は描かれています。
今の日本で思う、普段日常で語られる
言葉の慣習や属性なんかを、全て取り
払って、本音を真正面から描かないで
日常の言葉で書くと、こんな風に人の
精神性に訴えかけられるものになって、
読みやすいものにもなると感じました。
結婚してることや離婚、男女が年配で
あるとか学生であるとか。過去の思い出
に周りを囲まることでもなく、みんな
恋愛に生きていて、相手の男女が支えに
なっています。女性的な、男性の捉え方
など、今まであまり考えていなかった
ことや、何が魅力的な人なのか考えさ
せられた話でもありました。
田舎の紳士服店のモデルの妻
宮下奈都
文春文庫
学生の頃は、クラスで一番もてる男子
に告白されたり、かなりもてて、
ルックスも性格的にも高感度な夫、
達郎にアタックして結婚に至っては
いました。
彼女は大学から就職先、結婚相手と
思い描いたに近いものを手に入れて
来た道ではあったのですが、それで
今は潤と歩人の子育てを地方都市
の風景の中でしている、10年間の
日記という形で小説は進行します。
運動会でほぼ毎年、夫と二人三脚で
走ったり、地域や地縁での活動にも
徐々にですが参加して、都会だから
でない付き合いも出てきます。
40近くに夫もなると、体型からも顔
から放つ印象も、ちょっと機敏さが
伺える印象でなくなったなり、それ
ほど魅力的でなくなったように思わ
れ、子育てをしていく孤独な心情が、
物語全体が語られる中心となって
いるように思います。
田舎の紳士服店のモデルをずっと前
にしていた子供の頃のアイドル
歌手で俳優、林マヒナとの度々のお茶。
恋と在り来りの世界ではないものに
掛けたい気持ちがあって、でも普通
の人生を送っていて、旦那とも通じ
ていないような女性の心の動きが描
かれ、男性では中々気遣いできなか
ったことでもあると、過去形ではな
いですが、そんなことを感じました。
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デフレからの脱却を進めている安倍政権の
アベノミクス。経済が好転して、現在のところ、
支持も高くうまく行っていますが、景気の回復
軌道に入った段階で増税により不況に戻ること
にも注意が必要です。
国債買い入れオペ 等により無制限の量的緩和を
行うことで、円安が進行しています。国債大量
発行を続ければ金利もまた上昇してしまい、
ハイパーインフレが進むと、日本経済は海外から
の信頼を失い、完全に破綻ということにつながり
かねなません。それらを何よりも心配する専門家
もいるでしょう。ここで増税を行い借金を賄うと
いうのも重要な選択肢とも言えます。ニュースで
のIMFの日本に対する、日本は消費税が低いのでま
だ上げる余地があるなどの発言はここを意図して
いる感じです。
逆に適度なインフレ状態を維持することができれ
ば、地価も上昇し、銀行の不良債権問題も縮小し
ていきます。調整インフレ政策は、最後に残され
た一か八かの大きな賭けと言えるだろうとも述べ
ています。
この最後に残された、、、を果敢に取り組んでい
るのが現在の政権と考えられます。
森永さんがこの本を書いた1998年に、現在の
様な政策についても述べられているので、今まで
の間は何をどうしていたかということもあると思
います。
地価がある程度の範囲内で上昇すれば、融資して
いる金額が担保価値内に収まり、不良債権でなく
なる、また事業者も追加融資を受ける余力が増え
ます。
バブルの頃は、不況対策で低金利政策が採らてき
た中で、地価が上がって、本業の事業に充てる
資金ではなく、値上がりから投機を繰り返し膨大
な利益の追求を銀行員だけでなく他の企業もして
いたことがあります。値上がる担保をもとにして
不動産や、この運用で上がりそうな企業の株等に
投資して(それをまた担保に)キャピタルゲインを
追求しました。(てこの存在)
一般の人も、一見新奇な金融商品やもっともらし
い理論に引かれ踊りましたが、そのことについて
筆者は快楽と安楽、狂気の分析から述べています。
私は、なかなか収入や儲けが上がらない企業や人
で、苦しい状況に置かれていたら、簡単に儲かり
そうな仕掛けにのめり込んでしまうのではないか
と考えています。
今はデフレからの脱却時期なので、現在の様な
処方箋が採られています。
物価が上がらないとすると、いつまでたっても
既得権は温存されてしまい、さらに物価が下がれ
ば、逆に既得権が大きくなってしまいます。
経済的にはともかく、政治的にはインフレは
構造調整の潤滑油の働きをしてきたのです。
という筆者の主張に考えさせられました。
現在の政策のように国債を大量に発行した資金を
もとに大規模な公共投資を行うと、どちらかとい
うと今までの間に仕事を受注していた方が優位と
なって、新しいアイデアからビジネスを始めた人
の方には回にづらい側面もあると思います。
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本書では、「自分探し」から「共通性探し」へ、
心の価値観を共有できる仲間がほしいと思う
気持ちへ私たちはシフトしていて、それは人と
つながって、心情や気持ちを交換・交流させたい
と思う気持ちがあると述べています。
その背景には、確かな価値観や主義心情がない
ために自分らしさを追い求めますが、その自分が
何なのか本当はわからないということがあります。
ここ最近、少し前までの時代は、中心的価値
アイデンティティーがなく、周辺的場面の累積で
しか自分を確認できない彼らは、一層切実に、
「自分らしさの発見」や「自分探し」を追い求め
ることをメインテーマとしてきました。
自分なりの選択肢や個性を主張するよりも、同じ
本や映画を見て、「これ、面白いよね~」と周り
の友達と共感することのほうを重視し、そのほう
が楽しいと感じる人々が増えている、ということ
です。
→ヒットの流れも大きく変え始めています。
(物を購入する基準など)を本の後半部分で鏡衆
から述べています。
私の意見では、自分探しとは、他人とは違うある
意味では身勝手な自分を確立し、そこに凝り固ま
ってしまうことでは<なく>て、いい出会いをし
て、社会的なつながりの中で、自分自身に備わっ
ていなかった点を受け入れたり、お互いに人間と
してよりよく成長していくことだと思います。
もちろん自分と意気投合できたり、私のことを分
かってくれて、考えてくれていて、嬉しいと感じ
られたらと思います。それが現在の社会では、
派遣の扱いがただのコスト削減の様に感じられる
こと、集団の利益のため人をものか何かのように
扱う、というのが加速しているように感じられます。
現状では、給料が多くもらえない若者が、外国で
安く同じようなデザインで大量に生産された服や
均一ショップの商品を買い、同じ材料で同じように
できたメニューを食べたりと、その流れがデフレを
加速させてきたと思います(燃料費や原材料費、
株その他など上がっている物もあります)。
ただそれだけではなく、商品の価値をシフトさせた
り様々な段階を楽しんだり、それが広がってブーム
となったりもしています。
中間マーケターが新商品の宣伝など努力し新しい
ヒットを作り出している面は確かです。
女性ですと自分がスクリーン上で憧れる女優さん
が普段の暮らしで愛用するものを使ってみたいな
ど、人の魅力や影響力はもう少し強いというのが
感想です。