野菊の墓
伊藤左千夫
(新潮文庫)
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小さい頃から一緒にいた人と
年頃の時に注意され、
好きな感情に気づき深まっていく
そんな話です。
周りの嫉妬心、そこから
年が上だとか何かで、
政夫は早めに学校へ、民子はその
間に縁談の話があります。
ここ小説の舞台、矢切に記念碑があり、
小説の冒頭2段落目に、
"僕の家というは、松戸から二里ばかり
下って、矢切の渡を東へ渡り
(*矢切の渡し2013年2月号)、小高い
岡の上でやはり矢切村といっている所。
矢切の斎藤といえば、この界隈での旧家で、
里見の崩れが二三人ここへ落ちて百姓に
なった内の一人が、、、"
と戦国時代に国府台の合戦(こうのだい)
がありました。安房の里見義弘方は、
北条方の勇将富永三郎右衛門や
江戸城代家老東山丹波守直景(大将の一人)
を討ち取り一時は勝利しましたが、夜に
北条方の大軍に挟み撃ちにされ(敵味
方三千人以上(戦没者一万余とも)が
亡くなってしまいました)、
市川の須和田、中山を経て安房に逃れ、
再起できなかったということです。
最終的に政夫の母で、民子にとっては
恩人である育ての母の命で
縁談は断りきれないということに
なります。
それで、母は何年か後、苦しむ
ことになってしまいます。
相手との気持ちが通じ合う仲でいる人
と主人公が若い時分に出会い、今は
あまり幸せではないようです。
初恋の頃の出会いを覚えているのは
大切な気持ちですが、困難な人生の中で
出会う大切な人も、気が合う以上の
人も現れて来るように願います。