2015年2月アーカイブ

魔斬りの刃

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自分がなぜ殺されたのか、思い出せなかった。

主人公、騎寅は殺されかけたのですが、
目が覚めると生きていない感覚でした。
この小説が死後の姿や怨念を扱ったことや
殺人事件の推理小説としてと、
その要素も幾分含みながら、幾つかの領域をま
たぐ文学となっています。

彼のやっていること、生活は、もう彼は生
きてはいなかった、それまでに、というこ
とのように受け止められました。

makiri.jpg
マキリ
安達千夏
講談社

2011年(平成23年)3月11日(金)に起きた
東日本大震災。まるで5ヶ月前に大地震を
予兆した悪い感覚もありましたが、この時
故郷の山形を心配して十数年ぶりに帰郷しま
した。

新宿で騎寅が生存していて、テレビのニュース
に事件が伝えられたということは、自分が
容疑者、あるいは本当に殺したかもしれない
ということ。音信不通にしていた山形に
戻ります。

竜子は実家の家業の都合で、騎寅に断りを
伝えた。その後に、騎寅は悪い世界に入って
いき連絡もなく、どこかで死んでしまった
という伝えを持っていました。女性がなんで
私を取らないという感じを持っているように
思われましたし、その通りかもしれません。
でも竜子が一緒にいて支えることで騎寅が
生きていけたというのが私の感想の一つで
した。

氷室の即身仏は、その前に昔は逃げたと言っ
ていましたが、今現在あって、誰なのかこの
小説では想像が付きやすかったと思います。
ミイラは高貴な者が死後永遠のためなのに、
即身仏は苦しみのため、それを美化するよう
に捉えられるところが、この国の特徴かも
しれません。

また、幼なじみや初恋の人を入れても、人生
であまり多くの巡り会いは実際のところ、
なかなかないことを物語っているように
思われました。

2017年8月

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